「ヨガ歴も長いし、アーサナにも自信がある」と思っているあなたへ。そのポーズ、実は“なんちゃって”になっていませんか?
「ヨガ歴も長いし、アーサナにも自信がある」
もしあなたが今そう思っているなら、
少しだけ自分の身体に問いかけてみてください。
「でも、どこかの関節に慢性的な痛みや違和感を抱えていないか?」と。
その完成された(ように見える)ポーズは、
本当に正しい関節の連動によって作られたものでしょうか?
それとも、"柔軟な背骨"を使って巧みに「代償」しているのでしょうか。
ヨガの練習を深めていくと、
私たちは「身体のシステムエラー」に出くわすことがあります。
脳という"ソフトウェア"が
「アーサナを完成させろ」という強い指令を出すのですが、
筋肉や関節の柔軟性や安定性がないがために、
“ハードウェア”の本来の役割を無視して、
無理やりアーサナという"タスク"を
完了させてしまう現象です。
今回は、シャラやスタジオで頻発する
「よくある身体のエラーやアーサナのつまづき」を、
解剖学と構造の視点から紐解いていきます。
1. 前屈系のエラー:「ヒップヒンジ」の不在
■ 立位の前屈(ウッタナーサナ)
手が床につかない時、無意識に2つの代償行動をとることがあります。
一つは「胸椎の過剰な屈曲(背中を丸める)」こと。
ハムストリングスが硬くて骨盤が前に倒れない、
すなわち骨盤が前傾しないのにも関わらず、
可動性の高い胸椎を丸めて首を落とし、
「手が床に近づいた=前屈できた」と錯覚するのです。
もう一つは「腰椎の過剰な伸展(腰反り)」。
「背筋を真っ直ぐに」という言葉を忠実に守りすぎてしまい、腹圧が抜けたまま、腰を反らせて
無理やり骨盤を前傾させようとするエラーです。
これは腰椎の関節をぶつけるため、ダイレクトに腰痛を引き起こします。
正解は「膝を曲げて制限を解除し、
股関節から折りたたむ(ヒップヒンジ)」こと。
背骨を曲げるのではなく、
骨盤を大腿骨の上で動かす(前に転がせる)
必要があります。
■ ジャーヌシルシャーサナA
左足を伸ばし、右膝を曲げた時を考えてみます。
この時「左の体側をギュッと縮めて、あたかも前屈しているように見せる」人が多発します。
これは、伸ばした左足に対して骨盤を正面に向けるための
「体幹の回旋(腹斜筋の働き)」がない人が多いです。
回旋できず、ハムストリングスも硬いため、
脳は最も抵抗の少ない逃げ道である
「側屈」を選択してしまいます。
またこの時に胸椎を丸めて、前屈してる風の人も、腹横筋をオフして、肋骨をパカッと開く、言わゆるリブフレアを起こして腰椎を伸展させている人もよく見かけます。
どちらも背骨の生理的湾曲はない状態です。
2. 立位・回旋系のエラー:「骨盤正面」
■ パリブリッタ・トリコナーサナ(ねじりの三角のポーズ)
「骨盤は正面に保ったまま、胸椎からねじる」。
こう指導されたことはありませんか?
この指導法には大きな矛盾があります。
なぜなら、胸椎の回旋可動域は最大でも約35度。
腰椎に至っては5度。
最大でも40度ですよね。
それに対して、アシュタンガヨガの完成形約90度の回旋。
骨盤正面のままこのアーサナを作るのは、人間の骨格上不可能です。
結果として何が起きるか?
リブフレアを起こし、腰を反らせます。
結果としてなんちゃって回旋を作り出します。
正解は、後ろ足を踏みしめつつも、
骨盤も適度に同方向へ回旋連動させることです。
■ ウッティタ・トリコナーサナ(三角のポーズ)
これも「身体を2枚のガラスに挟まれたように」
という指導を受けたことはありませんか?
右股関節外転・外旋、左股関節外転・やや内旋位からこのアーサナを始めたとします。
この時左の骨盤を真横に左側にスライドすると、
右側の股関節の引き込みがロックされますよね。
行き場を失った力は、右の体側を潰し、
背中を丸めて「前屈」するという代償を生みます。
股関節が正しく屈曲するためには、
左側の骨盤がわずかに床方向へ内旋する
(相対的に股関節内旋→外旋に変化する)
ことを認識する必要があります。
3. 逆転系のエラー:コアの機能不全
■ サルヴァンガーサナ(肩立ちのポーズ)
「お腹の贅肉が胸の方にきて苦しい」。
生徒さんからこんな声をよく聞きます。
これは単なる体型の問題ではなく、
腹腔内圧(IAP)が保たれていないことを指します。
腹圧という内部の支柱がない状態です。
この状態でサルヴァンガーサナをすると、
重力に従って内臓や全体重が頸椎や胸郭へと落下します。
結果、頸椎や股関節、肘が痛くなります。
根本原因:「モビリティ」と「スタビリティ」の逆転
これまで挙げた全てのエラーは、1つの原因によるものです。
それは機能解剖学における「ジョイント・バイ・ジョイント・セオリー」が活かされていないことです。
本来、可動する関節(モビリティ)である「股関節」と「胸椎」が動かない。
その理由は様々ですが、現代の立ちっぱなし、座りっぱなしの生活が大きな要因となっています。
股関節と胸椎が動かないとどうなるか?
なんと脳は、本来安定すべき関節(スタビリティ)である「腰椎」を無理やり動かそうとしてしまいます。
「動くべき関節が動かないから、安定すべき関節が代わりに動かされてしまう。」
これこそが、ヨガ界で日常茶飯事に行われていることです。
そしてそのことに、生徒も、指導者も気が付いていない人が多いのです。
アシュタンガヨガととピラティスの必要性
アシュタンガヨガは、途切れない動きと呼吸、
そしてバンダ(腹圧)がすでに機能していることを前提にしています。
その時点で生徒に非常に高度なことを求めているんです。
現代人は、胸椎が動かず、腰椎は不安定。
腹圧のスイッチの入れ方もわからない。
まさにエラーだらけの状態です。
その状態でアシュタンガヨガをするとどうなるか?
エラーの嵐で怪我が起こるのは当然ですよね。
また、アシュタンガヨガは絶え間なく動き続けるヨガです。
激しい練習の中で、根本的な身体の使い方、
すなわちモーターコントロールを書き換えるのは至難の業です。
だからこそ、一度私たちは一度立ち止まる必要があります。
複雑な動きを削ぎ落とし、物理的なフィードバックを得ながら、
特定の関節を動かし、腹腔を安定させる。
つまり、ピラティス的なアプローチによって、
「関節を正しく使う」という身体教育が不可欠なのです。
あなたのそのアーサナは、本当に「正しく」動けていますか?
怪我なくヨガを長く楽しむために、
今一度、自分の身体のシステムと向き合ってみてはいかがでしょうか。
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